ところで、フランスのカフェやブラッスリーの由来をご存知ですか?これらは、地方出身者の出稼ぎ者が始めたものだと聞いたことがあります。当時のフランスは貧富の差が激しく、たくさんの人が、パリに出稼ぎに来ていたようです。
水野さんのお話によると、カフェやブラッスリーで働くほか、もっときつい肉体労働に従事した人がいたとか。当時は、夏場は水運び、冬場は暖炉の薪や炭を2階や3階の各戸に運ぶ仕事があったそうです。
これらは男の仕事で、女たちは男が運び出す炭おき場で見張っています。見張りながら、ワインを水の代わりに飲み、そのうちそこは仲間が集うコミュニティになっていったのです。
この炭おき場をイメージしてつけた名前が「ヴァンブーニャ」です。「vin=ワイン、bougnat=炭おき場」の名前のように、くつろいでワインを飲んでもらえるお店にしたいという思いがあります。
お客様に接するのが楽しいと話す水野さんは、ホテルやレストランのように役割が決まった仕事をこなす日々とは違い、現在はすべての仕事をこなすハードな毎日です。それでもお客様と直接お話しすることができる楽しみのほうが大きいようです。
水野さんを含めて3人いるスタッフは、全員何でもできる万能選手です。料理も作れ、ワインの知識もあり、何よりお客様が満足できる給仕力を備えています。
客層は、ワインは初めてという方からワインに通じていらっしゃる年配の方までさまざまです。女性1人の方も多いようです。女性1人で入れるお店といえば、それだけでお店の質の高さがわかります。スタッフのサービスや雰囲気に合ったお客が集まってくるということでしょう。
そういえば、以前お客様からこんなリクエストがあったそうです。
「銀婚式を夫婦で祝いたい。結婚した年のワインを用意してほしい。全体の予算はこれくらいで。」
リクエストされたワインは、銘柄も決まっていてとても手に入りにくいものだったそうです。しかも、それをいわれたのは予約日の数日前のことでした。
しかし、水野さんはせっかくの記念日を楽しんでもらいたいと、あちこちを探し、限られた日数の中で状態のよいものを見事に探し出し、最後は問屋さんまで直接取りにいったそうです。予算はオーバーしていましたが、そのままお客様に差し出すと、ご夫婦はすべてわかっていたように、深い感謝の気持ちを述べられたそうです。もちろんそのワインがどんなに探しにくいものか、またどのくらいのものかもわかったようで、予算以上の注文をされて楽しんでお帰りになったそうです。普段から、ワインも料理も一番いいものを給仕しているお店だからこそ、お客様もわかったのだと思います。
「お客様の期待に応えられたとき、そしてその見えない思いがお客様に伝わったときは非常にうれしかった。」と感慨深く語ってくれました。