うどんは毎朝20kg打ちます。開店当初は10kgだったらしいのですが、いつのまにか20kgに。それは、客数が増えたのはもちろん、お替わりが自由なことと、最初の盛りを、普通のうどん屋の倍以上にしていることが理由のようです。
そういえば小食の私は、食べきるのに苦労しました。うどんは消化のよい食べ物ですが、この日は腹持ちがよかったのを覚えています。
また、忘れてはいけないのが天ぷらです。料亭の天ぷらのような気取りはありませんが、何千個、何万個を揚げてきた奥さんの技術がおいしさを伝えます。
最近は、セルフの讃岐うどん店も増えていますが、そういうお店で、揚げ立てを出しているところは案外少ないのです。
ここ「七」も、てっきりそうかと思いきや、うれしいことに予想は外れました。天ぷらは温かかった。これって実は、うどんをおいしく食べる、必須条件の1つなんです。ただ、お客さんが多い時に揚げたてを出すのは、かなりの努力が必要です。以前に、1度だけ間に合わずうどんだけになってしまったお客様がいたそうで、それが奥さんの心残りになっています。
うどんに話が戻りますが、毎朝のうどん打ちは、自宅を改造した製麺所で行います。粉は、地粉とさぬきの粉をブレンドして、しこしこ、つるつる感と風味を追求しています。
「こだわりのないのがうちの特徴。安くてお腹いっぱい食べられるのがいい。」という山崎さんですが、小麦粉と食塩だけで余分なもの(化学調味料など)は一切使っていません。自分の手で粉をねって、寝かせて、自分で足踏みをして作ります。これこそ、実は手を抜かないこだわりの製法といえます。参考までに山崎さんの1日あたりの歩数は、足踏みをいれて25000歩だそうです。(成人の平均歩数は7000〜8000歩)
「お替わりお願いします」
うどんを茹でている山崎さんの背後から声がかかります。「はいよ」と答える山崎さん。男性客の多くは、お替わりをしていきます。客の顔を覚えていて、いつもと同じ量でいいか確認したりする様子は、採算度外視でやっている店の対応とは思えないほど、見ていて快いものです。
ご主人が心がけているのは、お客さんの名前を聞いて顔を覚えることです。次回来た時に、名前を呼んで迎えられるようにします。サービス業では基本的なことですが、そんなことも忘れがちのお店が多い中で、その姿勢は接客業の鑑であり、この当たり前のことが、他店とは違う一工夫ということに自然となっているようです。
午後1時を過ぎた頃には、昼時のピークが終わり、うどんもそろそろ「完食」です。「完食」の札が表に掲げられると、店内にいるお客たちにコーヒーをふるまいます。
この日も学芸大学の先生と学生さんが連れ立って来ていると、「先生、時間があったらコーヒーどうぞ。」とすすめています。コーヒーを飲みながら、いつもの世間話に花が咲きます。どうやらこんな時間をご主人も奥さんも楽しみにしているようです。