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「きぬたや」では、その日のお客さんの分だけ、そば粉を挽いてそばを作ります。
仕込みは早朝、手臼で粉を挽くことから始まります。手臼を使うのは、そばの感触を感じながら挽けるからだそうです。それぞれのお客さんに合わせて挽き方を変えるので、その感触が重要なのでしょう。
そばの実は数種類の産地、品種を使いわけます。それぞれ良い実と悪い実を、一粒一粒より分け、良い実だけを使うようにしています。
そして、ふるい方、打ち方、茹で方でも、それぞれ気を遣い、出来る限りの手間をかけて、お客さんに出しています。
しかし、こういったやり方では、1日20~30食分作るのが精一杯。商売としてもギリギリで、これを続けるのは大変です。
そのため、多くのそば屋さんは、ある程度手間を簡略化したり省いたりしているのだそうです。名店と言われているお店も例外ではないようです。
ただ、その手間の違いを感じ取れるお客さんがそれほど多くないのも事実で、気づかない部分を、やるかやらないかは、それぞれのお店次第。
ご主人は、手間を惜しまずにそばを作ることを選びました。自分が考える正しいそばを作る為には、当たり前のことのようです。
実際「きぬたや」のお客さんには、そこまで気付く方もいます。以前、挽き置きした粉を使って出したとき、「何か違うね」と言われたのだそうです。それからは、一人でも気づく方がいる限り手を抜けないと、挽き置きをやめました。
私が、なにげなく食べてしまったというのも、私がその手間を感じ取れる感覚を持っていなかったからでしょう。
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